「投資の大原則」をできるだけ簡単にまとめてみた

いきなり結論

この本の結論はシンプルです:

「インデックス・ファンド」に「長期投資」しなさい

なぜなのか

この本のタイトルでもある「投資の大原則」は、まとめると大体以下のようになります:

投資の大原則

  1. まずお金を貯めなさい
  2. 時間を味方につけなさい(=長期運用しなさい)
  3. 低コストのファンドを買いなさい
  4. 分散投資でリスクを減らしなさい

以上の原則に最も適合するのが、「インデックス・ファンド」への「長期投資」ということです。

順番に説明します。

投資の大原則その1「まずお金を貯めなさい」

ぐさっと心に刺さる言葉です。

100円が元手では、リターンが5%、7%、10%と言っても始まらないというわけです。

がんばって、貯めましょう

ただし、節約することを、つらい思いをしてやることと捉えないようにしましょう。

節約をするのは、充実感を得るためだ。人生に対する満足感。人生において最善の選択をしているという満足感と、そのような人生を送っているという充実感を得るためだ。

貯めるための節約術など、具体的な方法も説明されていますが、割愛します。

↓参考

投資の大原則その2「時間を味方につけなさい」

突然ですが、あなたが戦国大名になったとしましょう。

武勲を上げた部下が、こんな褒美を要求してきました:

「明日から、この将棋盤を使って

1日目は1マス目に1粒

2日目は2マス目に2粒

3日目は3マス目に4粒

4日目は4マス目に8粒

……

という具合に、米粒を置いていって、64日目に将棋盤の上に乗った米粒を全て私の褒美としてほしい」(※将棋盤は8×8=64マスある。)

これは要するに、1日毎に米粒を倍にして、それを64日間続けるということです。いわゆる「倍々ゲーム」です。

最初の数日を見てみましょう。

1+2+4+8+16+……

こんな感じです。

一見大した量ではないように見えますが、最終的には合計で

18,446,744,073,709,551,615 粒

になります。これは現代日本の年間米生産量の

約5万年分

に相当します。(詳しい計算は最後にまとめました。)

当然褒美として渡せる量ではないですね。

このように、倍々ゲームは時間が経つと凄まじい量となります

先程の褒美の条件は、投資で言えば

年100%のリターン

というようなものであり、こんな好条件は普通期待できないわけですが、倍々ゲームの恐ろしさというのは、仮に増加率が小さくてもそれを繰り返すと膨大な量となる点にあります。

倍々ゲームの別名が複利です。

複利がどれほど強力なのかを、投資の世界で述べた「72の法則」というものがあります。(「~の法則」というと途端に胡散臭い感じがしますが、これは純粋に数学的な法則です。)

法則の内容は、

「資産が倍になる年数X」と「複利のリターンY」との間に

XY=72

が(ほぼ)成り立つということです。(数学的な証明を最後にまとめました。)

リターンYが1%なら、Xは72年 (XY=72×1=72)

リターンYが3.6%なら、Xは20年 (XY=20×3.6=72)

リターンYが7.2%なら、Xは10年 (XY=10×7.2=72)

といった感じです。

つまりあなたが資産を10年で倍にしたい場合、資産運用のリターンとして大体年7%を目標とすればよいと分かります。

もう一度言いますが、資産を200%にするために、年7%で良いのです。

これが複利の力です。(年7%の利率が簡単というわけではないですが……。)

ここで注目したいのは、Yを上げるのは難しいが、Xは簡単という点です。なぜなら資産運用を早く始めさえすれば、Xは大きく出来るからです。(あなたが20年前から運用を始めていれば、年3.6%で資産が倍になっていました。)

逆に言えば、「長期間運用する前提であれば、高利率を目指す必要がない」ということです。

これが時間を味方につけることの意味です。複利を回す回数を出来るだけ増やすということです。

複利の力について本の中でこう述べています:

お金がお金を生む。そして、お金が生んだお金がまたお金を生む。

別の言い方をすればこうです:

若い頃に使う1ドルは7ドルか8ドル、いやそれ以上の額の支出と同じだった。1ドルを投資に回せば、時が経つと、7ドルか8ドルという額になるからだ。

↓参考:「複利」の説明。

 

投資の大原則その3「低コストのファンドを買いなさい」

同じ性能の商品なら、より安い方を買うに決まってます。

消費者としては、より良いものを、より安く買いたいわけです。

投資についても同じです。

投資信託(=ファンド)は購入の際に、商品価格とは別に「購入手数料」と「信託報酬」というコストがかかる。

↓だから

中身が同じなら、この二つのコストがなるべく低い方を購入するべきである。

↓ところで

インデックス・ファンドとアクティブ・ファンドを比較すると、アクティブ・ファンドの方が手数料・信託報酬が高い割に利率が低い。(

↓よって

インデックス・ファンドを買うべきである

 

という結論になります。

)について補足しておきます。

インデックス・ファンドとは何か

インデックス・ファンドとは商品価格が「何らかの指数」に連動するように運用されるファンドのことです。

例えばS&P500という指数がありますが、これをインデックスとして採用するファンドAがあれば、

S&P500が上がれば👍Aの価格も上がる👍

S&P500が下がれば👎Aの価格も下がる👎

ということで、これが「指数に連動」の意味です。

とすれば、ファンドAを購入するというのは、

今後S&P500は上がる

ことを期待しているということです。(買った時点よりファンドAが値上がりしていれば、それを売ることで利益が出るため。)

ところで、S&P500はアメリカ経済を表す指数ですから、これは取りも直さず

アメリカ経済は今後成長を続ける

ことを期待することと同じです。

そしてS&P500は「長期的に見れば」上がり続けています

アクティブ・ファンドとは何か

インデックス・ファンドによる運用は、目標とする指数に自動的に連動させるだけなので、そこに裁量の余地はありません。あるとすれば、それは「どの指数を選ぶか」です。

一方で、アクティブ・ファンドは、「投資のプロ」が判断し、運用を行います。

インデックス・ファンドは指数に信頼を置くのに対して、アクティブ・ファンドは「投資のプロ」に信頼を置くということです。

しかし、本の中で著者はこう主張しています:

市場以上に賢いものはいない。

要するに、「投資のプロ」であっても市場の予測は不可能ということです。

この前提に立つと、アクティブ・ファンドでの資産運用は博打のようなもの、ということになります。しかも「投資のプロ」への報酬も払う必要があるためコストが余計にかかります。

だからアクティブ・ファンドは本の中でおすすめされていません。

↓参考

投資の大原則その4「分散投資でリスクを減らしなさい」

分散投資によってリスクが低減することは、遺伝子多様性によって生物が全滅のリスクを減らしていることに類似しています。

ある優秀に思える遺伝子に依存し、同一の遺伝子をずっと複製していった場合、その遺伝子に適合するウイルスが出現した時に、その生物群にとって致命的なダメージとなってしまいます。

投資についても同じことで、複数の資産に分散して投資することで、リスクを低減させることが可能です。

補足1:米計算の詳細

等比級数の和の公式により、

(64日目での総米粒数) = $2^{64}-1$ = 18,446,744,073,709,551,615 粒

一方、精米は3,250粒で65gだから、精米1粒の重さは65÷3,250=0.02g。

よって、褒美の米の重さは

18,446,744,073,709,551,615 × 0.02 = 368,934,881,474,191,032.3g

キログラムにすれば

368,934,881,474,191kg (小数点以下切捨て)

トンにすれば

368,934,881,474t (小数点以下切捨て)

となる。

日本の令和2年度水陸稲の収穫量は7,226,000tだから、これは

368,934,881,474 ÷ 7,226,000 ≒ 51,056年間分

である。

補足2:「72の法則」の数学的証明

利率RでY年経過した時に資産が2倍であったとすると。

$(1+R)^Y=2$

が成立する。両辺の自然対数をとると、

$Y\log (1+R) = \log 2$

となる。自然対数のテイラー展開を用い、Rの2次以降を無視すれば、左辺は

$Y \left ( R – \frac{R^2}{2} + \cdots \right ) \sim YR$

と近似される。$\log2 = 0.69 \cdots$だから

$YR \sim 0.69  $

が言える。Rをパーセント単位にするために、両辺に100を乗じて

$Y(100R) \sim 69$

を得る。

69の近くでより約数の多い72を採用したのが、いわゆる「72の法則」である。(約数が多ければXやYを計算する時に割り切れて便利。)

だから正確には「69の法則」と言ったほうが良いのだろう……。

↓参考。69を中心として±5までの約数表。

 

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