というわけで行ってきました!
勉強になることが沢山聞けたので、レポしたいと思います。
!あくまでイチ参加者の感想です!
第1部 ソク・ジョンヒョン
この本
を描いた人です。
アニメ絵でよくあるデフォルメについて、どうしてそのような描き方に至ったのか、自身の体験を交えつつ語っていただきました。
確かに、アニメの絵は現実に比べると省略されていたり、誇張されていたりするわけですが、どうしてそのような描き方をするのか。
メッセージを効率的に伝えるため。
というのが一つの回答。例えばエジプトの壁画。
現代的な基準から言えば、平面的な絵ということになる。しかし、この時代の彫刻を見てみると、エジプト人は人間の身体的な構造についてかなりの知識を持っていたことが分かる。つまりエジプト人はわざとこのような簡略化された絵を描いていたと考えられる。
なぜそんなことをしたのかというと、それはこれが芸術的な作品ではなく、あくまで「文字」であったから。(文字というのはメッセージを伝えるための記号であり、記号とはある決まった様式で書かれる。そして効率性を考えるなら、それは描くのが簡単な方がいいに決まっている。)
- 目は横向きより正面向きで描く。
- 顔は前向きより横向き。
- 身体は前向き。
といった工夫がなされている。こうして分かりやすさを作っている。
人間は対象を眺めたときにそのすべてを把握するのではなく、それらの特徴を抜き出して把握している。だから伝わる絵を描くのであれば、対象の本質を抜き出してそれを強調するなりすれば良いと考えられる。実際、
こういう絵は全くリアルではないけれども、カエルだと認識出来る。それはカエルの
- 大きな目
- 緑の皮膚
- 手の形
などを上手く捉えているからだ。
つまり
モノの特徴を抜き出すことで効率的に伝わる絵を描ける
ということだ。
ちなみにソッカ先生はリアルタッチの絵を描く方が好きとのことだったが、一枚絵を描くイラストならばそれでOKだが、漫画でそれをやろうとすると時間がかかってしまって大変だとのこと。絵を描く効率性についてはいつも頭を悩ませているそうな。
そこから解剖学の話へ。
解剖学は複雑極まりない人体を、簡略化する試みであると捉えられる。人体を様々な部位に分けることで、(名前を覚えたりするのが大変だということはあるが)分解して理解しやすくしている。理解できないものは描くことができない。逆に、理解できればそれを描くことが出来る。(ソッカ先生の話を聞いていて思ったのは、描く対象について理論的に理解しているということ。なぜ筋肉や骨がそのような形なのか、それをただ覚えるだけでなく、理由までコミで納得している。)
- 頭蓋骨で男女差で最も現れるのは顎である。
- 骨格上、最も男女で差異が現れるのは骨盤である。(そしてその理由。)
- 腕の骨について、普通は1:0.8:0.6だが、これらの比率を調整するとどんな効果が得られるのか。
などなど。こういう知識を蓄え、人体を理解することで、描けるようになってゆく!
最後に、「絵だけに興味を持ってはいけない」とのこと。
The worst scientist is he who is not an artist; the worst artist is he who is no scientist.
– Armand Trousseau
(訳)最悪の科学者とは芸術家でない者で、最悪の芸術家とは科学者でない者のことだ。
絵の技術にばかり傾倒するのではなく、描こうと思っている対象の構造や機構を(科学的に)理解することも大事であり、これらは車の両輪のように互いに欠かすことが出来ないものであるということだ。
第2部 キム・ジョンギ
こんなことが出来る人です。
twitterで動画を見たときに衝撃を受けて「一体どうやったらこんな絵が描けるようになるんだ!」とずっと思ってました。その理由の一端を今日教えてもらいました。
子供の頃から絵を描くのが好きだったが、頭から足の先まで全身が描けるようになるまで10年位かかったとのこと。(やっぱり神の如き技も、莫大な時間をかけた修行の賜物なのだ……。Just practice!)
絵を描いていて、最初は立体的に描けなかったが、より立体的に絵が描けるようになったのは「立方体」の使い方を覚えてからだった。要は複雑な絵でも、それを立方体に分割することで、正しい遠近法で描くことが出来るという教えである。
目新しい知識ではなかったが、キム先生も使っていたとは……。
慣れるまではずっと
- 人体を立方体へ分解
- 人体の知識で線を補完
- 裸の人体が描ける
- 服を着せて出来上がり
という流れで描いていたそうな。
描くものを見ながら描く人もいるが、自分は対象をよくよく観察して、その特徴を覚えて、見ないで描く。もちろん、対象のすべてを覚えることは出来ないから、特徴を覚えておく。
あんなことが出来る人だから、瞬間記憶能力か何かを持っているのではないかと思っていたが、そこまでの記憶力は無いそう。ただ視覚的な記憶能力は昔から他の人より優れていたともおっしゃっていました。第1部でも出てきましたが、やはりモノの特徴を捉えるというのは絵を描く上で重要な技術なのだなと思いました。
隠れて見えない部分まで描いてみると、絵の間違えが発見できる。
先生でも間違えるんですか!という感想。
スラスラとストレートに描いているように思われるけれど、実は頭の中で補助線や立方体を想像しながら描いている。例えば顔を描くときにはルーティンがあって、まずおでこから描いて、眉から鼻と進む。こうすることで、それらが補助線の役割も果たしてくれる。
顔を描くときに
こういう補助線を描くけれども、先生はそれを描いていないと見せかけて、実は描きながら眉や鼻の輪郭線にそれらの役割を持たせていて、補助線として利用しているのだ! 「私は練習の結果補助線を描かなくても絵が描けるけれど、補助線を描かないのが良いことでもなく、補助線を描くのが悪いことでもない。」とのこと。
そして、ここからが中々に驚きの発言。
円を描く時、始点から初めて終点まで描ける。星型でも、描きながら調整していって終点までみなさん描けるでしょう。それと同じことで、人を描く時も、描きながら直前に描いた線と上手く(遠近法的に)整合性が取れるように線を描いていって、最後まで描き切ることが出来る。
全然無理です先生!
一体どれだけ練習すればその境地に至ることが出来るのか……。
私は「覚えたイメージをプリントするように描く」ことと「描きながら(遠近法的に)正しい線を想像で描く」ことをミックスして絵を描いている。
先生方の話を聞いた感想。
好きなもの、興味のあるものをとにかく観察して、描きまくる。そうするとだんだん上手く描けるようになってくる。
なんだか当たり前のことだけど、やっぱり大事なのは、描くものをしっかり観察して、特徴を覚えて、理解して描くこと。
練習しか、ないんだなあ。
すばらしいイベントでした。
参加できてよかった~。
Thank you!
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